合理性の隙間 ~ 空きスペースから都市開発を民主化する

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日本の秋は三連休が多い。数えてみると、9月から11月にかけて4回も三連休があるみたいだ。普段は出不精の僕も流石に三日間も休みが続くと1日くらいは外に出かけてみたくなる。秋物のコートをタンスの奥から引っ張り出して準備は万端、ビールを片手に最寄りの駅から電車を捕まえた。今日は本当に何もすることがない。従ってもちろん目的地もない。普段は止まらない駅で気の向くままに降りて散歩してみることにした。

気がつかないうちに結構遠くまで来ていたみたいだ。あまり人がいない。なるほど郊外ということはあって、空気は少し澄んでいる気がする。でも不思議な感じがする。自宅の最寄り駅近辺にすごく似ている。目を凝らしてもう一度街並みを眺めている。酔っているせいではない、確かに似ている、というより、ほぼ同じにも思える。派手な看板が目印の大手ハンバーガ店、銀行、コンビニエンスストア。ここもそうか、この街も「均質化」しているんだ。「均質化」と書くと専門的で少し難解に感じる方もいらっしゃるかもしれないが、要は、街同士が似てきているということだ。都市開発が進み、街は便利で綺麗になる一方で、どこも同じような街並みになってきてしまっている。均質化による弊害はあげるとキリがないが、どの街も同じになってしまっては先ず直感的にツマラナイことは私たちの共有認識としてはあるのではないだろうか?

均質化が起きる理由は実はシンプルだと考えている。企業が土地の活用方法を考えるときに参考とする指標の中に、その「街らしさ」を反映したものが汲み取られていないからである。標準的な合理性に基づいて土地活用の計画を考えると、他の街で既に成功している収益性の高い企業又はテナントが誘致されるのは想像に難しくないだろう。では、私たちに取る手段はないのだろうか?あなたの街をもう一度見渡してみてほしい。企業の「合理性」から溢れた街のスペースが目に入らないだろうか?

そのような「街の隙間」は、空き家もあれば、使い道を熟考されず、既に駐車場に整備されたり自動販売機が設置されたりしているものもある。私はここにあなたの街の可能性が眠っていると考える。例えば、駐車場が空いている時間は、街の若者が雑貨を販売できる場所として使いたいかも知れない。空き家として放置されている物件も少し手を加えれば、近所の主婦の憩いの場となるかも知れない。

街の隙間を上手く使えば、都市は本来あるべき複雑性、多様性を取り戻せるかも知れない。空きスペースは、都市開発を民主化する。

氏名:
鈴木 綜真

所属:
株式会社 Placy代表

プロフィール:
1993年4月生まれ. 京都大学工学部物理工学科を卒業後, MITメディアラボのDIgital Currency Initiative/Open Music Initiativeにてブロックチェーンで音楽の著作権を管理するプラットフォームの開発に参加. その後, ロンドン大学UCL Bartlett School修士課程で都市解析を学ぶ. 音楽やイマジナビリティの観点から, 街のパーセプションを解析し 都市における感覚的知覚に価値をもたらすことをテーマに研究を行いながら, 2018年9月に日本へ帰国. 現在音楽で場所を探せる地図サービスPlacyを開発中.