マーケティング視点で読み解くポップアップストア

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※写真は、イメージです。

ポップアップストアとは、ある一定期間のみ展開される限定ストアのことを示すものです。同ストアの原点は13世紀末、ヨーロッパのクリスマス市場まで遡れるそうです。日本だと、酉の市の熊手や朝顔市、ほおずき市などがそれに当たるでしょうか。これらも一種のポップアップストアと言えます。

長い歴史を持つポップアップストアですが、マーケティング手法として注目を集めるようになったのは、実は比較的最近のこと。1997年、パトリック・クーリエルチェがロサンゼルスに開設したクラブ・ウェアのポップアップストアが大成功をおさめたことから火が付き、瞬く間に全米や欧州の主要都市に拡がっていきました。

都市の意外なスポットに、斬新でユニークなコンセプトを持ったショップが突然現れ、人々の話題をさらう。そして、いつの間にか消え去ってしまう。

広告マーケティング戦略のひとつに、ゲリラ・マーケティングという手法があります。同手法は、フラッシュ・モブや落書き、モニュメントの設置など、都市空間にある種の切れ目や断層を生じさせ、人々の記憶に刻みこもうという試みです。いわゆるマスメディアのような習慣的な広告手法ではなく、刺激的で慣習に捕らわれないコミュニケーション手法として、商品やブランド訴求を図ろうとする一種のプロモーション・アイデアと言えます。ポップアップストアは、広義では、このゲリラ・マーケティングの一種でもあります。

ではなぜ、これら手法が近年注目を集めるようになったのでしょうか?

それは、いわゆる既存のマスメディアを活用したコミュニケーション手法に限界が見え始めてきたからです。インターネットが普及し、アナログからデジタルに時代の基盤が移行しつつある世紀の変わり目の時期に突如現れたこの手法は、リアルの持つ価値を改めて我々に認識させる動きとなりました。

現在、小売市場では、オンライン・ショッピングが勢いを見せております。しかし、リアルの価値もいずれ再認識されていくことでしょう。しかし、そのためには、単なるモノ売りの場としてポップアップストアを活用するのではなく、なぜその場所にそのショップが登場したのか、きちんと説明出来るような、戦略的な狙いと企みが必要とされることでしょう。

氏名:
斉藤徹(サイトウ・トオル)

所属:
株式会社電通 電通シニアプロジェクト/未来予測支援ラボ代表

プロフィール:
1982年西武百貨店入社、流通産業研究所、パルコを経て現職。著書『超高齢社会の「困った」を減らす課題解決ビジネスの作り方』(翔泳社)、『ショッピングモールの社会史』(彩流社)、『吉祥寺が「いま一番住みたい街」になった理由』(ぶんしん出版)など多数。吉祥寺グランドデザイン改定委員会幹事、社会福祉士、一般財団法人長寿社会開発センター客員研究員。