第二夜 スキマ進化の2つの方向性

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前回、都市においてスキマは、一種の無駄と捉えられ、通常は可能な限りその量を減らそうと意識が働く、と述べた。経済が上向きに伸びている時ほど、また、空間利用の需要が高い、大都市の中心部であるほど、その意識は強く表れると考えてよいだろう。しかし、高齢化が進んで人口が減少し、経済が横ばいになる時代を迎えると、その意識にも変化が生じる。簡単に言うと、スキマに対する空間利用の圧力が小さくなる。加えて、社会の価値観が多様化し、技術の進展もあいまってライフスタイルの多様化が進むと、空間に対して求められるニーズも多様化し、その変化のスピードも速くなる。このような背景の中で、都市のスキマにも新たなニーズが生まれ始める。

そのニーズには、大きく2つの方向性があると私は考える。一つ目は、変化の速い時代のニーズに反応して、小回りのきく、可変性の高い空間を柔軟に使いこなすという方向だ。建物の軒先のわずかなスペースを利用して、ポップアップのお店を出すとか、夜、居酒屋をしている場所で、昼に宅配のお弁当をつくるとか、空間と時間のスキマを見つけ出し、柔らかアタマで新しい利用方法を発明する。これらは、使っていない空間や時間を、新たな発想で使えるようにしようとする点が共通している。

もう一つは、スキマを場所の価値を高めるための余白として活用しよう、という考え方だ。例えば、吉祥寺のような繁華街を想像してみよう。魅力的なお店がたくさんあり、「カフェ巡り」なども盛んな場所だが、街をぶらぶらと歩く時間を楽しみたいと思った時、気持ちの良い屋外で、寛いだり、座って話したりできる場所が意外にない。まちのわずかなスキマを使って、そうした場所をつくることもまちの価値を高める一つの方法になりうるのである。

第三夜では、その方法について考えてみよう。

自動販売機は、日本が世界に誇る都市のスキマ充填ツール。
吉祥寺のコピス前。吉祥寺において余白の空間は貴重。

氏名:
西尾 京介

所属:
株式会社日建設計総合研究所 上席研究員

プロフィール:
大阪大学大学院工学研究科博士前期課程修了後、日建設計入社。大規模都市開発の計画、都市のビジョン・戦略策定、都市交通計画、再開発等の調査・計画に従事。2006年より日建設計総合研究所で、中心市街地活性化やまちなか再生、公共空間の利活用や価値向上等に関する、国や自治体等のコンサルティングを手がける。一社)都市計画コンサルタント協会、公社)日本都市計画学会理事。