第三夜 都市の「スキマ」を「余白」としていかす

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都市におけるスキマを、場所の価値を高める「余白」として使う、とはどういうことか。第一夜で述べたように、余白とは、経済的な価値があるとわかっていて、あえて使わず空間として残すことに意義を見出すものだ。新たに建物を建てる際に、計画的に余白をつくることは、比較的たやすい。しかし、スキマは、「あえて残した空間」ではなく「結果的にできてしまった空間」なので、これを余白としてうまく活用するには、少し工夫が必要だ。  

私は、スキマを余白としてうまく機能させるには、2つの方向性があると思う。それは「補完」と「相乗効果」である。街を歩いていると、ビルと街路との間にできるわずかなスキマに、花を並べて街を彩るような例をよく見かける。これは「補完」だ。植栽も十分に設置できない街路に、小さな潤いを与えている。しかし、より重要なのは「相乗効果」という考え方である。スキマはほとんどの場合、その領域の縁の部分に生じる。だからスキマを上手く活かすことができれば、公共空間と建物との間の相乗効果をつくることができる。

足立区北千住に、住宅が密集した狭い路地空間に面した古い空き家を、個性的なシェア空間として再生した「せんつく」という施設がある。ここでは、建物のリノベーションと合わせてブロック塀が取り除かれ、宅地内にあったスキマがまちに開かれている。今後はここにテラスを設置することで、1階の飲食店の拡張空間にも、路地に面したまちの縁側にもなるような場を作っていくという。そこにはきっと、意図したものも、意図せざるものも含めた多様なアクティビティが生み出されるだろう。

塀のように敷地の境界にある物理的な障害を取り除いたり、敷地境界や建物の外壁の透明性を高めたりすることで、余白をつくり、相乗効果をあげるための必要条件が整う。そこに魂を与えるのが、アクティビティを誘発する中間領域の設定だ。公と私との間に、まちの性格を考えた魅力的な中間領域をつくることがまちを面白く奥行あるものにする。それはベンチ一つを置くことからでも始めることができる。

このような視点でみれば、都市は至るところが未知の可能性をもつスキマであふれている。

まちかどでよく見るスキマの修景。
物理的なバリアがないだけでは、必要条件に過ぎない。
どこにでもある住宅のスキマが魅力的な余白へと変わる(足立区の「せんつく」)
《写真提供:アーコアーキテクツ、著者加工》

氏名:
西尾 京介

所属:
株式会社日建設計総合研究所 上席研究員

プロフィール:
大阪大学大学院工学研究科博士前期課程修了後、日建設計入社。大規模都市開発の計画、都市のビジョン・戦略策定、都市交通計画、再開発等の調査・計画に従事。2006年より日建設計総合研究所で、中心市街地活性化やまちなか再生、公共空間の利活用や価値向上等に関する、国や自治体等のコンサルティングを手がける。一社)都市計画コンサルタント協会、公社)日本都市計画学会理事。