小さな公園がもっと使われるようになるために

2030

これからのまちづくりは、ファジーなことに慣れていかなければ、と思います。テンポラリーな空間利用、時間的なシェアリングによる使いこなしなどをもっと柔軟に進めないと。でも公共空間はテンポラリーな対応も、シェアリングにも慣れてない。公共団体が整備するもの、仕事の対象とするものは、基本的に仮設だったり暫定だったりしないからです。それは何故でしょうか。おそらく、税の使途の対象は恒久的なものでなければならないというような考えが、慣習的というよりも行動規範として定着しているからだと思うのです。また、そうしたことは法令の中にも予算制度の中にも垣間見えるように思います。そうした考えは間違っている(もしくは正解だ)、ということを言おうとしているのではなく、むしろ、〇×の基準を明確にして、そこにすべての事例を当てはめていくという仕事の仕方に限界が来る(そのスタイルでは公共の福祉の増進へと導けない)のではないかな、という問題提起をしたいのです。市民サイドも、そこを過度に期待するのはやめましょう、ということを提案したいのです。

全国には一番小さなカテゴリーの公園である街区公園や児童福祉法の児童遊園などの小さな公共空間が、10万か所程度存在しています。こうした空間が都市の中でどのように使いこなれされているか、地域にとって大きな効用を発揮して、エリアの市民生活が豊かなものになっているか。テレビなどで、公園は禁止看板ばかりというような特集が組まれるたびに、公園で何していいのか分からないというような声に触れるたびに、そうした問題意識を抱かざるを得ないのです。

戸建て住宅に囲まれた小さな公園
フェンスに囲まれているがボール遊びも出来ず、使われていない空間

公園管理の仕事の85%は苦情・クレーム対応、というようなこともよく聞きます。そのたびに禁止看板が増える、とも。そもそも、公園の禁止行為は条例で定められているのですが、公園を毀損するような行為以外は、抽象的な規定になっています。典型は「公園の目的・用途外の利用」「管理上の支障のある行為」「他の利用者の利用に支障、迷惑な行為」などです。これらを根拠にして、犬の散歩禁止、ボール遊び禁止、スケートボード禁止、自転車走行禁止などの個別具体な禁止事項が、公園管理の現場の裁量において定められます(市長が定める、としている割合は10%程度)。武蔵野市の条例は「市立公園の管理上指示した事項及び管理に支障がある行為」です。「管理上指示した行為」という書き方も珍しいかも知れません。

全国の地方公共団体の公園条例における禁止行為の既定の仕方
個別具体な規定にはなっていません

私が好ましく思っているのは「他の利用者の利用に支障、迷惑な行為」。「公園の目的・用途外」なんて具体的に何言われているか分からないですし、「管理上の支障のある行為」も管理者の都合でしかない。他の利用者に迷惑な行為は、その時、その場の関係性の中で変化します。他に誰もいない、お年寄りがベンチに座っている、子供が走り回っている、時々刻々、場所場所で禁止行為は変わって然るべきなのです。苦情やクレームが寄せられて、365日24時間掲げられる「〇〇禁止」の看板が増えて、その禁止看板が、また新しい苦情・クレームを生み出す。そんな負のループはできるだけやめたいです。

テンポラリーでファジーだけど皆で巧くシェアリングが出来ている街。苦情・クレームが日本で一番少ない街。そんなまちが一番かっこ良いと思うのです。公園の使い方から、新しいまちづくりが模索できるかも知れません。
なかなかいけてるカッコいい公園の注意看板、武蔵野市で見つけました。

座っているだけで怒られそうなバッテンだらけの看板
武蔵野市東町防災広場
すごくよく考えられている素敵な禁止看板だと思います

氏名:
町田 誠

所属:
国土交通省PPPサポーター
元国土交通省 公園緑地・景観課長、東京都 公園緑地部長

プロフィール:
1982年建設省。国土交通省、国土庁等勤務の他、2000年国際園芸・造園博覧会ジャパンフローラ2000、2005年日本国際博覧会(愛知万博)、2012年全国都市緑化フェアTOKYO GREEN2012において、会場整備、大型コンテンツのプロモート等に携わる。さいたま市技監、東京都建設局公園緑地部長、国土交通省都市局公園緑地・景観課緑地環境室長、公園緑地・景観課長などを歴任。千葉大学園芸学部・横浜市立大学国際教養学部非常勤講師。SOWING WORKS代表。