ポップアップストアで知っておきたいキーワードを解説する「ポップアップストアキーワード」。
初回は「ショールミング」について解説。
ショールーミングとは
ショールーミング(showrooming)とは、商品の大きさや重さ、色合いや質感といったデザイン性、商品の使い方といった機能性を実店舗で確認し、その場では買わずECサイトで購入する消費者行動である。安価なECサイトで購入するために、実店舗を展示会のような「ショールーム」として活用する動きだ。
ショールーミングは消費者にとって合理的な行動といえる。ECサイトは安価であるものの、実際に商品を手に取らないと分からないことや、購入前に実物を見ないと不安なことがあるだろう。そこで、ショールーミングによってお金を払わずに不明点や不安点を解消するのだ。
ショールーミングは、機能性が分かりにくく高価格帯の電化製品や、デザイン性が大切なアパレル業界で行われやすい。
ポップアップストアにおけるショールーミング対応策
ショールーミングの動きは、一般的な固定店舗だけでなく期間限定のポップアップストアにも影響がある。ショールーミングへの対応策としてポップアップストアが取れる方法は大きく二分されるだろう。ショールーミングを活かすという方法と、ポップアップストアの性質を活用してショールーミングに対抗するという方法だ。
対応策は既存の固定店舗を参考にすると分かりやすい。ショールーミング対応策は大きく4つに分けられる。
- 価格の割引き、送料無料などECサイトの「安さ」に対抗する。
- ECサイトにはないサービスを提供し「利便性」に対抗する。
- 独占販売、限定商品などECサイトの「商品ラインナップ」に対抗する。
- 自社ECサイトへの導線を引き、「他社ECサイト」に対抗する。
ショールーミングへの対応策1:「安さ」で対抗
そもそもショールーミングが行われるのは、ECサイトの方が安いことが多いからだ。それならば手っ取り早い方法は、ECサイトの価格以下に値下げすることだ。商品の販売価格を下げる、送料無料にする、オプション料金を無料にするなどが挙げられる。
しかし、手っ取り早い分「安さ」に対抗するのはリスクが大きい。ECサイトは店舗を持たない分、在庫管理コストや人件費が安いので、販売価格を下げる余地は実店舗より大きいのだ。すると、値下げ合戦が起きて価格破壊になってしまう可能性がある。そなったら当然、売上も利益も減少する。
また、実際に実店舗でショールーミングを行っている人がいて、どれだけ機会損失しているのかを把握できないため、どれぐらい値下げをすれば良いか判断がつかない。そもそも取引先との契約で値下げ自体できない場合もある。
期間が限られているポップアップストアでは、価格破壊が起きるほどの長期間の出店ではないので有効だといえる。一方、今後ポップアップストアや固定店舗を出店する可能性があるならば、有効な対応策ではないだろう。
ショールーミングへの対応策2:「利便性」で対抗
ECサイトが強い「安さ」ではなく、「利便性」で勝負して総合的に実店舗を選んでもらおうという対応策だ。例えば、即日配送を行う、商品解説やレビュー、体験談のPOPを作成する。銀行振込・分割支払い・商品券の取扱い数を増やして支払い方法増やす、などが挙げられる。
ポップアップストアで利便性に対抗するのは有効な方法だ。ポップアップストアは「店舗に行くこと自体がイベント」だと考える消費者が多いので、利便性を追求するのはポップアップストアというイベントを楽しんでもらう・喜んでもらうことにつながる。
ショールーミングへの対応策3:「商品ラインナップ」で対抗
ECサイトが取り扱えないような商品でショールーミングの意味をなくすのが「商品ラインナップ」での対応策だ。
例えば、ECサイトに商品を出店しないような契約を結び独占販売をする。自社で商品を制作しプライベートブランド商品を制作する。ECサイトでは取り扱っていないストア限定商品を販売するなどだ。
ポップアップストアではあまり現実的な対応策とは言えない。そもそも独占販売やプライベートブランド商品の制作ができるなら、ショールーミングに関係なくやった方が良い場合が多いだろう。また、ショールーミング対応のために商品ラインナップで対抗するのは費用対効果が合わない。その他の経営判断とあわせて、おまけ的にショールーミング対応をしたほうが良い。
ショップ限定商品は、だいたいのポップアップストアでも行える範囲内だ。しかし、やはりショールーミング対応というよりは「ポップアップストアに来てくれたお客様を喜ばせる」という観点で考えるほうが良い。
ショールーミングへの対応策4:他社ECサイトへの対抗
ECサイトを運営している企業にとっては他社ECサイトへの流入を防ぐのが、ショールーミングの対応法だ。
ECサイトを運営している企業にとって問題なのが、実店舗で商品を見て他社のECサイトで購入されること。そこで、ショールーミングを規制するのではなく、むしろ促進させる。ただし、促進させるのは自社のECサイトだ。
例えば、ポップアップストアでタブレット端末を設置したり、商品のQRコードを添付したりして、自社ECサイトにアクセスできるようにする。口コミやレビュー、商品説明を自社ECサイトで見てもらい、気になった商品は店頭で確かめる。ショールーミングをあえて推進して、他社ECサイトに行かないように防ぐのだ。
ポップアップストアは「利便性」と「商品ラインナップ」で勝負
ポップアップストアのショールーミング対応策として良いのが、「利便性」と「商品ラインナップ」。ECサイトを運営している場合は、「他社ECサイトへの対抗」も追加される。
ポップアップストアは、来店したお客様が「楽しい」「うれしい」と感じてもらえば成功に近い。ポップアップストアは期間限定なので、お店に来ること自体にイベント感があるからだ。イベントを通して「楽しい」「うれしい」と感じてもらえれば、店舗の売上だけでなく、ブランドや商品の認知につながり、将来的なポップアップストア以外も含めた売上につながる。
「利便性」と「商品ラインナップ」はショールミングへの対応策のみならず、お客様が「楽しい」「うれしい」とお店づくりにも関わる。だから、ショールーミング対応とお客様を楽しませ喜ばせるという2つの意味でポップアップルストアは「利便性」と「商品ラインナップ」を追求していくべきなのだ。