「軒先からはじまった、最初の一歩」軒先ビジネス利用者インタビュー ルジアダス伊藤さん

「軒先からはじめよう、最初の一歩」

千代田区、台東区、中央区が隣接する東神田のビルの一階で、このコピーを体現している方がいらっしゃった。

車一台。コーヒー¥200が全てだった。

軒先ビジネスを利用し、2013年から半蔵門にて、キッチンカーでコーヒーを出店していたルジアダス(株) 伊藤さん。

当時、シンプルなカップにコーヒーを提供するというシンプルなスタイルであったが、コーヒーの豆にはこだわったという。それが半蔵門の味がわかるビジネスマンたちにウケた。固定客も多く、「ポットで持ってきてくれ」と頼む企業もあったそうだ。帝国データバンクの機関紙にて、軒先のシェアビジネスが特集された際の事例として、伊藤さんの店舗を掲載。そこから、お客さんが急増。それを自信に、実店舗出店を決意。2014年に、千代田区で実店舗をオープンした。

当時、伊藤さんが取材をうけた帝国データバンクの機関紙

対面を通じて実現した、対面ではできない料理

現在は、神田の実店舗で1日10食限定でランチ営業している。週ごとに変わる10品目がのったプレートを提供。9割9分が女性だという。そしてもう一つ、現在の伊藤さんの売上を支えているのが、ケータリング事業だ。

伊藤さんのつくるケータリングフード

「飲食業はピンキリで、高級フレンチからファーストフードまで幅が広いんです。ですが、共通して言えることはウェイティングだということ。冷蔵庫に食材があって、料理人がそろっていても、台風などで、お客さんが来なければ、商売にならないし退屈なんです。その点、ケータリングは、売り上げが見えるし、作品性の高いものを作れ、事前に組み立てられる。また、経営上でも少ないリソースできるし、利率がいいんです。」

取材日も、大手企業の納会のケータリングを終えてきたところであったそうだ。

「最近は、若者は会社の飲み会に参加しない傾向にあります。だから、会議室で飲み会を行う企業が増えてきている。飲食のニーズが変わってきているんです。」

基本的には、企業の納会関係やギャラリー等のレセプションパーティー、新製品のPRの場でのちょっとしたFOODの受注が多いと話す。

お客さんが情報を持っている時代だからこそ、地域の横のつながりを大事にしたい

伊藤さん自身、軒先ビジネスの半蔵門スペースから始まったこともあり、千代田区で飲食業をやるというのは念頭に置いていたそうだ。伊藤さんが実店舗をもつ岩本町は、千代田区、台東区、中央区が隣接する。秋葉原電気街の反対側、隣接する区と昭和通りに切り取られたエリアを「裏千代田」と呼び、下町のような雰囲気を大事にしているという。

自分のお店をだし、周辺にその後できたお店たちと街おこししようぜという流れに。実店舗開店から半年後にマップを作成した。

周辺の飲食店、ホテル、ギャラリーにて、マップを配布。左から、2015年のスタート時のもの、現在のもの

作成から4年が経ち、色々なお店から「マップにいれてほしい」という状態が続いているそうだ。次は、A2の新聞紙サイズになるという。

出典:urachiyoda instagram

「自由にやっているからいいんですよ。町会は縦割り社会。お祭り等も別々でやっている。だけど、歩けば徒歩圏内。だからこそ、横のつながりを大事にしていきたいんです。価格で競争するのではなく、フラットに。囲い込みをするのではなく、近くにいいお店があれば、マップを渡して『行ってきなよ』と送り出す。いい店だなと思われるとお客さんは戻ってくるし、仲間がついてくる。東京のど真ん中で、下町っぽいことをしたい。」

取材中も、お店の前を通りがかった方が伊藤さんに手をふっていた。この間は、常連さんから自転車をもらったという。
どれもこれも、横につながりから生まれたことだ。

半蔵門のビルの一角で一杯200円のコーヒーはじまった伊藤さんのビジネス。それをきっかけに、東神田でお店を出すことにつながり、そこで立ち上げたローカルコミュニティは地域に根付き始めている。
まさに「軒先からはじめよう、最初の一歩」を具現している。

サクセスストーリーには、つらい経験はつきものだ。何かつらかったことはありましたか?と質問したところこんな答えが返ってきた。

「正直ないですね。ずっと楽しいと思ってやっている。毎日寝るのが、4時間くらいでも楽しいから全然つらくないです。」
と話していた。これこそ、サクセスストーリーの本質なのかもしれない。

次は、どんなスタートアップが軒先ビジネスからでてきてくれるのだろうか?楽しみである。

店舗情報

パルケトーキョー

参考

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