ポップアップストアで情報発信を。象印協賛のポップアップストア事例

工事中の一見殺風景なエリアにカフェ形態のポップアップストア(ポップアップショップ)がある。「Shibuya info βox」と名付けられたこのポップアップストアには2つの組織が関わっている。

マイボトルを使用することで環境に優しい社会を目指す象印マホービン株式会社。そして、「遊び心で、渋谷を動かせ。」をコンセプトに渋谷のまちづくりを手がける一般社団法人渋谷駅前エリアマネジメントだ。

どうして渋谷のまちづくりを手がける一般社団法人がポップアップストアを出店するに至ったのか。お話を伺った。

私たちだけではShibuya info βoxは立ち上がりませんでした。

2016年11月19日〜2017年6月末(予定)の期間限定で出店している「Shibuya info βox Supported by ZOJIRUSHI My Bottle どこでもcafe」(以下、Shibuya info βox)。八幡橋の南側、東京都渋谷区渋谷3丁目23に位置する。渋谷警察署の左側、国道305線を歩いて行くとすぐ。歩道橋の近くにある。

大通りから右折した川沿いにある。

Shibuya info βoxは、一般社団法人渋谷駅前エリアマネジメントが行う「SHIBUYA +FUN PROJECT」(http://shibuyaplusfun.com/)の情報発信のために開設。「マイボトル」キャンペーンを行う象印マホービン株式会社が協賛している。

「象印さんは『マイボトルキャンペーン」において、環境対策の一環としてマイボトルで気軽に飲み物を頂ける全国の給茶スポットをWEBサイトで紹介しています。また弊法人が行っている渋谷のまちづくりは、街の利便性だけではなく、環境にやさしいまちづくりが大切になってきます。みんなで未来の渋谷を形作っていこうという『遊び心で、渋谷を動かせ。』というコンセプト。そして環境にやさしいまちづくり。この2つにご賛同をいただき、この度、象印さんにご協力をいただくことができました。」

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開放感のあるガラス張りの店舗だ。

店内で販売しているコーヒーや紅茶は、象印製の「ステンレスタンブラー」で出てくる。実際にポップアップストアで印象的だったのは、このタンブラーだった。飲んでみると分かるが時間が、経っても冷めにくい。ステンレスタンブラーの「真空2重まほうびん構造」が冷めにくい秘訣だそう。本を読んだり仕事をしたりして、コーヒーが冷めてしまった経験は誰にでもあるだろう。容器を変えるだけのことでも記憶に残る印象的なカフェに変身する。

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ステンレスタンブラーで時間が経っても美味しく頂ける。

「象印さんを含め、さまざまな方にご協力をいただきShibuya info βoxを出店することができました。取組に理解いただいた行政のみなさま、店舗の設置にあたっては開発事業者のみなさま、実際の店舗運営には象印マホービン株式会社。そして応援してくれた地元のみなさん。弊法人だけでは、とてもShibuya info βoxを形にすることはできませんでした。」

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店内はカウンター4席。テーブル席が8席だ。

Shibuya info βoxは、何もない更地からポップアップストアを建設している。催事スペースを利用したり、箱が最初からあって内装だけ施したりすることが多い日本のポップアップストアでは、かなり力を入れている店舗だろう。

店舗を制作するというのは実際かなり手間がかかるものだが、ポップアップストアのコンセプトを体現したり、目的に直接的にアプローチしたりするのにはこれ以上の方法はない。

「今回ポップアップストアを出店した目的は、未来の渋谷の魅力、どんな魅力的な街になるかの情報発信です。しかし、単なる一方向の情報発信では、渋谷の街がどんな見た目になっていくかは分かっても、魅力までは伝わりません。私たちが『SHIBUYA +FUN PROJECT』と『FAN』を強調しているように、『驚き』や『遊び心』を伝えたい。地元の方や企業、行政と一緒になって渋谷を盛り上げていきたいんです。」

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渋谷がより使いやすく、楽しめる街に変わっていく。

今回ポップアップストアを出店することで、「遊び心で、渋谷を動かせ。」といったコンセプトが目に見える形で具現化したのが良かったという。何もなかった所に突然お店ができて、ふらっと立ち寄ってくれる。渋谷の街のなかで憩い・交流の場として機能する。ポップアップストアで渋谷の未来にワクワクする。目に見えるお店ができたことで、「未来の渋谷」をわかりやすく伝えることができていると実感しているそうだ。

情報発信やプロモーションをメインとするポップアップストアでは、お店の外観や内装をはじめ、伝えたいコンセプト・魅力・情報を店舗に凝縮することが大切になる。

まずコンセプトや魅力を言語化し、「どんな色を基調とするか」「言語化したコンセプトや魅力はどんなデザインがあっているか」「どんな企画にするか」など落とし込まなければいけない。売上を目的とするポップアップストアとは違い、情報発信やプロモーションを目的する場合は、成果が定量化されにくく改善もしにくい。半ば決め打ちするしかないので、妥協せずにデザインや企画設計をする必要があるのだ。

マイボトルでもっと楽しくなるポップアップストア

ポップアップストアの大きな特徴は、やはり「マイボトル」だろう。象印が2006年から行っている「マイボトルキャンペーン」。全国約150ヶ所にある「給茶スポット」に水筒やタンブラー、ステンレスボトルを持っていき、店内の飲み物を購入できるキャンペーンだ。リユースできるマイボトルで資源を削減しつつ、おいしい飲み物を楽しむキャンペーンとなっている。

Shibuya info βoxでは、マイボトルを持っていくと店内の飲み物を100円引きで購入できるうれしい特典付きだ。

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店内で作ったコーヒーをマイボトルに移してくれる。

店頭でマイボトルは販売していないので、マイボトルを持っていないなら予め購入するのがオススメだ。渋谷エリアだと、Shibuya info βoxの近くにあるスターバックスコーヒー 渋谷三丁目店、渋谷マークシティB1FのDEAN&DELUCA、渋谷ヒカリエ ShinQs B3FにあるH&F BELXなどで購入できる。もちろんマイボトルでなくても店内で飲食可能だ。

「ポップアップストア店内は、白を基調としたシンプル内装。壁には「SHIBUYA +FUN PROJECT」の取り組みを展示しています。

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ゆったりコーヒーを飲みながら、未来の渋谷にワクワクする。

店内ではこだわりのドリンクとスイーツがいただける。コーヒーは氷温熟成したものを用意。氷温熟成とはコーヒー豆の成分が凍る「氷温域」で熟成させる方法だ。氷温熟成をすることで、通常より香りが豊かに、甘い香りが際立ち、口当たりがまろやかになる。

スイーツで人気なのは「プレミアムブラウンバウム」。グルテンフリーなので糖質制限をしている方も頂ける。実際に食べてみるとふわっとした触感。通常のぎっしりとしたバウムクーヘンではないので、小腹が空いたときにぴったり。

表面はシュガーで軽くまぶしており、全体的に上品な甘さでまとまっている。甘さ控えめでミルクの風味が楽しめるクリームと、彩りあざやかなベリーでいろいろな味を楽しめる。

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コーヒーとの相性が抜群。

情報発信のポップアップストアとしても、単純にカフェとしても楽しめる。実際、渋谷に新しく誕生したカフェとして受け入れられているようだ。

「やはり『情報発信』といっても一方的な押し付けがましいものでは何も伝わりません。そこで、ポップアップストア自体を楽しんでもらえるようなカフェを心がけています。日常シーンでふらっと立ち寄ってもらえる。楽しんでもらえる。Shibuya info βoxに来られたお客様が、来店をきっかけに未来の渋谷に興味を持っていただければ幸いです。」

単純にカフェとして楽しめるのが一番。楽しんでもらうことが土台となって、ポップアップストアで交流が生まれ、わくわくするような渋谷を形作る。マイボトルも忘れずに。

ポップアップストアの成功の指標とは

ポップアップストアで難しいのは費用対効果の基準だ。実際ポップアップストアに来てどうなれば成功なのか。どうやって成功の指標を計測するか。コストに比べてパフォーマンスが分かりにくいのだ。

「未来の渋谷のまちづくりという点で、成果が測りにくいのは事実です。情報発信をして、すぐに何かが現れるわけではありませんから。それでもテーブルに置いているアンケートで分かることはたくさんあります。実際に来店された方がどう思って、どう感じているかアンケートで集めることで、今後どのように情報を伝えていくべきなのか、どういったまちづくりを意識していくか分かることが多々あります。」

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アンケートをもとに、店内の展示や情報発信を改善していく。

よくお店に置いてある「お客様の声」といったアンケートを答える人はなかなかいない。お店のコンセプトが打ち出されておらず、お客様が自発的に行動しようとしないからだ。

ポップアップストアではコンセプト設計をしっかりすればするほど、お店に行くことが「一種のイベント」となる。ポップアップストアに来店されたお客様は「(イベントに参加したし)せっかくだから」とアンケートに答えてくれる可能性が高い。Shibuya info βoxでは「自分も未来の渋谷を魅力的にする一員なんだ!」と思わせてくれる。

「アンケートの他にもご来店されたお客様の生の声を聞くようにしています。まちづくりは人が主体。人が前提となって進めるものです。しかし油断していると、なかなか地元の人の声が届きにくくなってしまいます。弊法人のコンセプトを具現化したポップアップストアがあることで、地元の方々の自然体な生の声が届きやすくなるんです。こうして集まった生の声は、今後の情報発信をするうえで貴重だと感じています。」

ポップアップストアを情報発信・プロモーションの場に

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ポップアップストアは物販だけがすべてではない。新商品のプロモーション、キャンペーン・プロジェクトの情報発信の場としても使われる。プロモーションや情報発信を目的とするポップアップストアは大きく2つに分けられる。

  1. 店舗でモノを売らず、商品体験やイベントを行うポップアップストア
  2. 店舗でモノを売るが、店舗での売上を重要視していないポップアップストア

前者では、2016年12月10日〜25日に行われるPanasonic Beauty Salonが例として挙げられる。Panasonic Beauty Salonでは、商品を売るのではなく美容家電製品の体験スペースやトークショー、プレゼントなどイベントに特化している。

製品機能が多様なもの、高価なもの、使ってみて良さを実感できるものは、モノを売らずにイベントに特化したポップアップストアが向いている。

後者の店舗でモノを売るが、店舗での物販を重要視していないポップアップストアは、まさに今回の象印・渋谷駅前エリアマネジメントの例だ。

もし渋谷駅前エリアマネジメントが、モノを売らず情報発信だけのポップアップストアを出店していたら、ここまで成功していなかっただろう。カフェという形態を取ることで、自然と人が集い、交流が生まれる。「SHIBUYA +FUN PROJECT」を体現するような情報発信施設になったのだ。

象印マホービン株式会社もカフェでの物販は重視していない。「マイボトルキャンペーン」を知ってもらったり、自社製品を知ってもらったりすることが目的。

実際、Shibuya info βoxではじめて「マイボトルキャンペーン」を知る人は多そうだ。ちょっとお出かけしたときに、自動販売機やコンビニで飲み物を買うのではなく、「給茶スポットあるかな?」と探したくなる。

また店内で使われるステンレスタンブラーはちょっとした感動だ。「コーヒーが冷めないので最後までおいしい」という体験はShibuya info βoxが他のカフェとは一線を画するポイントのひとつだろう。

ポップアップストアには、モノを売るという店舗の役割と、楽しむ・体験するというイベントの役割がある。実際、TVCMや車内広告では買おうと思わない方も、カフェで象印製品を体験して買ってみたくなる人もいるはずだ。従来の広告ではリーチできなかった消費者も、体験の要素を入れたポップアップストアだとリーチできることもあるのだ。


ポップアップストア情報

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  • 名称:Shibuya info βox Supported by ZOJIRUSHI My Bottle どこでもcafe
  • 開催期間:2016年11月19日〜2017年6月末(予定)
  • 出店場所:東京都渋谷区渋谷3丁目23。(八幡橋の南側、渋谷警察署の左側、国道305線を歩いて行くとすぐ。歩道橋の近くにある。)
  • Shibuya info βox HP:http://shibuyaplusfun.com/news/detail/69
  • マイボトルでどこでもカフェ HP:http://www.zojirushi.co.jp/cafe/index.html
  • 組織:象印マホービン株式会社、一般社団法人渋谷駅前エリアマネジメント

ライターおすすめは月替りの自家製スイーツ。12月はガトーショコラだ。

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食べてみると、しっとりと上品な甘さが口の中に広がる。そして、ナッツの感触が口を飽きさせない。

まずはケーキをそのままいただき、生クリームやベリーを絡ませる。すると、また違った味わいを楽しめる。1度で3回楽しめる一品だ。