ポップアップストアは口コミを拡散にうってつけ。
「人をダメにするソファー」。
数年前のバズワードを覚えているだろうか。
出典:Google Trends 「人をダメにするソファー」
いま「人をダメにするソファー」がとてつもない進化を遂げている。
アメリカで「人を動けなくする魔法」とまでいわれたビーズソファーブランドYogibo(ヨギボー)が日本に上陸して早2年。
42ものポップアップストアや固定店舗を出店し、その「魔法」にかかった人たちの間で口コミが右肩あがりだ。出典:Google Trends 「ヨギボー」
ポップアップストアとECサイトを行き来するO2Oマーケティング
東京の新名所、東京スカイツリーの眼下に広がる東京ソラマチ。そこにYogibo(ヨギボー)が2016年3月19日〜2017年02月05日の期間限定でポップアップストアを出店している。
東京メトロ押上駅のB3出口を出てすぐ、2F9番街のエスカレーターのすぐ近くにある。エスカレーターのすぐ近くにポップアップストアがある。
壁がなく「ポップアップストア」というより「ポップアップスペース」という印象。
「ヨギボーは触ってもらって良さを体験できる商品。壁がないことで通りすがりの方々に興味本位で触ってもらいやすくなるんです。」
たしかに、お店に入るには多少なりとも抵抗があるし、お店の中で商品を触るのは気が引ける。それが壁がない空間だと、ちょっと立ち寄ってみたくなる。
壁がなく自然と店内を訪れたくなる
「ヨギボーではECサイトも展開していますが、ソファーは実際触ってみたくなるもの。ポップアップストアに来られるお客様のなかには『実際に触ってみたいから』という方が多くいらっしゃいます。逆に通りすがりでソファーの質感を気にってくださった方が、ECサイトで注文することもあるんです。」
なるほど。ソファーやクッション、ベッドやアパレル商品など、見た目だけではなく質感が重要な商品は、ECサイトだけで完結しない場合が多い。ECサイトからポップアップストア、はたまたポップアップストアからECサイトと、双方向のO2Oマーケティングがお客様の心をガッチリ掴んで離さないポイントなのかもしれない。
「特にポップストアの立地はお客様の目に留まるための大切なポイントです。エスカレーターから下りてきたお客様。テラス席から店内に入るお客様。壁がないことである人通りの良い通路となっています。」
テラス席からもポップアップストアへの来客が見込める
そして、ふとソファーを目にしたお客様の口コミマーケティング、いわゆるバイラルマーケティングの仕組みも欠かしていない。
店内の商品はすべて撮影OK、ビデオOK、SNSへのアップOK、キャストに撮影を頼んでもOKというOKづくし。ポップアップストアに来店したお客さんは自然とInstagramやtwitterに写真をアップしたくなる。むしろSNSにアップするためだけに来店するお客様も多そうだ。
ついつい触りたくなる魔法がいっぱいのポップアップストア
店内にはたくさんのビーズソファーが並んでいる。特に目を引くのが特大サイズのYogibo Max。人気のポイントは多彩な機能。ビーズが良い具合に身体を固定しソファーにもベッドにもイスにもなるスグレモノだ。
横にして座ればソファー。
頭の部分だけを少し上にあげて固定することができ、するとベットに変身。
ビーズソファを立てた状態から腰かけるとイスになる。
「意外にもソファーをすでに購入している方からご好評です。なかには『ソファー買っちゃたんだけどこっちにすれば良かった!』なんてお客様もいらっしゃいますよ(笑)。大人三人分が座れるスペースがありますし、立てかければ省スペースなのでお掃除もラクチン。ソファーの後ろが掃除しにくいのが気になってしまう綺麗好きのお客様にも人気です。」
触ってみると低反発で身体が包み込まれるような印象だが、沈み込むような不快感はない。このやわらかさの絶妙なバランスでソファーにもベッドにもイスにも変化するポイントなのだ。「やわらかすぎない秘訣はビーズだけではありません。ビーズのアウターカバーがいちばんオススメなポイントです(笑)ヨギボーが日本に上陸したのは2年前ですが、2年前に買われたお客様が褒めてくださるのが、この『ヘタレにくさ』です。洗濯し乾燥機にかけるとヨギボーに張りが戻ってきますし、中のビーズのみも販売しています。定期的なメンテナンスでより長く使えるので、長く長く可愛がってほしいですね。」
ソファーに横になりながらアウターカバーを触ってみる。引っ張るように触ると伸縮性があり丈夫そうな生地なのがよく分かる。こうやって商品力をすぐ確かめられるのもECサイトにはない、ポップアップストアの強み。自分の五感で確かめられるから疑いようがない。
「アウターカバーが丈夫なので、爪のお手入れや噛みグセなどに気をつけていれば、ペットと一緒に暮らしていても安心です。他にもついついイタズラしちゃう赤ちゃんがいるファミリー層。カバーを洗いたい綺麗好きな方にもオススメです。アウターカバーには1年間保証期間もございます。」アウターカバーは取り外して洗濯可能。
ポップアップストアは、「体験できる」のが大きなポイント。お客様が体験しているときの商品説明は、自分が体験している分、すっと頭に入ってくる。感じた疑問点はその場で質問できる。その場で買わなくても家に帰ってECサイトを見てじっくり考えることができる。
近年増えているECサイトによるポップアップストア出店は、ECサイトだけだと不安なお客様を逃さない受け皿になっているのだ。
「ポップアップストアで思った以上に口コミが広がった」
いつの間にか「動けなくなる魔法」にかかっていると、赤ちゃんを連れているお母さんが「ヨギボーだね。近くにあるね」と言っていた。赤ちゃんには可愛い魔法がかかっていた。
「ありがたいことにヨギボーは口コミで広がったようなものです。ビーズソファーを出している大手家具メーカーと違って、ヨギボーは日本での認知はまだまだ。全国にポップアップストアを多数出店して、通りすがりの方々に触ってもらう。たとえその人が買わなくても、SNSやブログを通して情報発信してくれる。それを見た方がポップアップストアに訪れてくれる。当然、商品力が土台ではありますが、固定店舗と違って比較的コストがかからないポップアップストアじゃないと、全国に出店することはできません。」
現在、固定店舗を含めて24店舗の出店。そのうちポップアップストアは15店舗だ。
ポップアップストアを多店舗展開することで、お客様の認知を一気に広げる。低価格の商品から売れ筋の商品まで幅広く触って体験してもらい口コミを拡大。
「ヘタレにくく、洗濯や掃除もしやすい。そういった商品力には自信を持っているので、安価でお客様に体験してもらえるポップアップストアはマーケティングの有用な施策です。ふだんECサイトでリーチできないターゲットも、出店場所によって接触することができます。こちらの東京ソラマチでは20代〜40代の女性やファミリー層、ひとりの暮らしの学生さんがよく訪れます。」
ポップアップストアには、小物から大型のビーズソファーまでたくさんの品揃えがある。商品ラインナップが多いので、次から次へと手に取りたくなる。固定店舗だと「またくればいいや」と思ってしまうところ、期間限定のポップアップストアだと「せっかくだし少し見ていこうかな」となりやすい。手にとってみた商品は、ついついSNSにアップしたくなる。口コミが口コミを呼ぶ。店内にはついつい手に取ってしまう小物もある。
ポップアップストアは口コミ獲得のソリューションとなりうるか
AmazonやSNSが普及してから、商品の口コミを重視する消費者が増えている。ひとむかし前まで「口コミ」といったら井戸端会議のような口頭伝達が中心だった。しかし今「口コミ」といったら真っ先に思い浮かべるのはECサイトのレビューといったオンラインの口コミだ。
では口コミはどこから生まれるのだろうか。
ひとつは商品を購入したお客様。実際に購入したお客様が、買ってみないとわからない機能性や色合いとといった見た目。普段使わないと分からないメリットやデメリットを共有してくれる。
もうひとつ注目しなければいけないのは、購入していないけど商品を体験したお客様だ。
これはオンラインだけではリーチしきれない。インターネットで商品説明を見ただけのレビュアーは用をなさない「口コミもどき」として埋もれていく。
商品の購入動機として強い口コミの獲得は、商品の良さを実際に見て触ってもらうしかない。ではそれを可能とするポップアップストアは口コミ獲得の新たなソリューションとなりうるのだろうか。
正直なところ、結論を出すのはまた時期尚早であろう。ポップアップストアという概念は日本ではまだまだ一般的ではないからだ。ただ、アーリーアダプターは次々とポップアップストアを活かしているのも確かである。
そして、「動けなくなる魔法」にかかるチャンスが期間限定なのもまた確か。
■Yogibo Store(ヨギボーストア)東京ソラマチ店
- 開催期間:2016年3月19日〜2017年02月05日
- 出店場所:東京ソラマチ3F 9番街 エスカレーター横(東京メトロ 押上駅B3出口から徒歩3分)
- オンラインショップ(Yogibo store):http://yogibo.jp/
いちばん人気のYogibo Maxは人気カラーが在庫間近。ライターのオススメはHugibo。後ろから抱きしめてくれる。寂しい夜にはピッタリだ。